正義(Justice)
正義とは理性的部分が貪欲な部分、強欲な、貪婪な、そして暴利をむさぼる部分を封じる力である。それは君のものであり、ぼくのものでもある諸問題を、仲裁者のように、あるいは仲裁者によって解決すめように導く。
貪欲な部分はきわめて狡猾で、最初、判断を誤らせねものだから、反対の術策は慎重な対応策を取ることによってはじめて正義が保たれる。主要な術策は契約である。それは貪婪さがまだ明確な対象をもっていない時、作成された契約である。ある人が二人の相続人の間に次のような分割契約を考え出した。「君が分割をして、ぼくが選ぶか、あるいはぼくが分割して君が選ぶか」。このことは他の術策もあり得ることを示唆している。あらゆる契約を外にして、正義の原則は平等ということである。すなわちあらゆる交換、分割、あるいは支払いにおいて、ぼくは自分の知っているすべての知識を用いて相手の立場に立たねばならないこと、そしてその取り決めが、はたして相手の気に入るはずのものであるかどうか決めなければならない。
正義の基礎であるこの他者に対する大いなる配慮は、同胞はつねに目的として考えられるべきであって、決して手段として考えててはならない(カント)ということに帰着する。たとえば、給与。それでもって人間らしく暮らしていけるかどうか吟味しなければならない。信心深い女中。はたして彼女に、礼拝に出席する時間、福音書を読む時間、などがあるかどうか考えなければならない。家政婦のこどもたちのこと、などを考えなければならない。これらの例からわかるように、人は仲介者(仲買人、執事、デパート)なしですませばすますほど、正義を為すいっそうの手段をもつのである。