2016/09/11

コペルニクスは天の回転

 この天体の回転の書の中で、地球に運動を与えている意見を抱いている私は直ちに罰せられると言って騒ぎ出すであろうことを私はよく存じています。けれども私の意見は他人の判断を考慮していない点で満足していません。
 哲学者の仕事は神が人間の理性に許し給うた範囲にてあらゆる事物について探求するから、その思想は愚人の判断に従うべきでないですが、正義と真理に全く反する意見は避けるべきです。
 私が地球が動くことを肯定したならば、地球は不動で空の真中に中心であるという意見が何世紀もの間の判断している人々が、どんな不合理であると評価しようとするかで、私はその運動の証明のために著述を公にすべきであるか、あるいは反対に哲学の神秘は友人や身近な人だけしか、それも書物によってではなく、口だけでしか知らせない方がよいと長い間考えました。彼らはある人々が考えるように意見を伝えることを惜しんでそうしたのでは決していないと私は思います。
 そうではなくて非常に偉い人々によって熱心に研究された非常に美しい事柄が何か得にならないと学問に真面目な働きを捧げようとしない人々や、他の日と日度の例と勧めによって哲学の自由な研究に勧奨されても精神の愚鈍のために哲学者のなかにあることも恰も蜂蜜のなかの黄蜂のような人々によって軽視されるのを恐れたからだと思います。このように考えまして私の意見の新奇と不条理に対する恐れが私をして、とうに完成している著述を発表せずにおくところでした。
 しかし私の友人たちは私が長い間躊躇し、彼等に反抗さえしたのを思い返させました。彼等は既にその4倍もの私のしまってある研究を本に書いて公にすることを度々私に勧めたばかりでなく、私がそうしないでいる事を何度も非難しました。その他の優れた学識のある人々が同じように私に求め、数学にたずさわるすべての人々の利益のために私の研究を公にすることを、私の懸念のためにも拒絶しないようにと勧めました。
 地球が動くという私の理論は多くの人々に不条理に見えようとも、私の著述が出版されて不条理の雲が明瞭な説明によって消えて行けば、それは多くの称賛と感謝を喚び起こすであろうと彼等は申しました。長い間彼等が私に求めていた私の著述を出版することを友人たちに許すに至りましたのは、このような勧めとこのような希望によってであります。

ニクラウス・コペルニクス「天体の回転について」