カール
若い士官達はただもう戦争のことを考えて目を輝かせているよ。誰に向かってやるかはあまり問題にしないのだ。彼等は熱心に外交秘話が惹起した争いについて論じている。イギリスは本気で火蓋を切るに違いない。そしたらすぐヨーロッパの他の国々もきっと巻き込まれて戦意中の戦争になることは疑いなしと彼等はいうのだ。
フリートリヒ
そりゃ戦争到来を心から歓迎しない軍隊なんで無いよ。目覚ましい働きをして認められ昇進しようというのだからね。僕はちっとも悪いとは思わんね。
カール
でも今ほどどこもかしこも盛んに軍備をやっていて、しかも今ほど長く平和が続いているなんて珍しいじゃないか。
フリートリヒ
それは当然さうでなければならないので、昔は戦争というものは、力が有り余っている場合にその有り余った力で行われるのだ。戦争をやる人間も、有り余ってさしあたり居なくても差し支えない人間、また戦いに必要な金といって余分に貯えてあった金か又は少なくとも大して工面しなくても調達できた金だった。ところが今はどうだ。国民はすばらしい軍備を整え、男子という男子をほとんど繰り出し、あらん限りの力を出して戦うのだ。最初の軍備の費用さへ中々捻出できない位だ。それこそ国家存亡の戦争であることを覚悟しなければならん。だから皆少々控えめに用心しているのも不思議ではない。